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魅力発見・西早稲田スタイル
vol.4

西早稲田商店街で半世紀以上続く老舗

親子で守り抜く「早稲田煎餅」の伝統
石原松花堂(徒歩7分・約510m)2020年10月撮影
早稲田観光のお土産として、また早稲田に暮らす人々にとってはお茶の間のお供として長く親しまれている「早稲田煎餅」。早稲田の文字と大隈講堂の焼印が刻まれたお煎餅は、西早稲田商店街にある「石原松花堂」の店内で一枚一枚手作りされています。今回はその誕生秘話と西早稲田商店街の魅力について、このお店の3代目・石原善裕さんと女将の石原紀久代さんに話を伺いました。

早稲田土産として圧倒的な信頼。
懐かしい味の「人形焼」や「早稲田煎餅」

石原松花堂
石原松花堂(徒歩7分・約510m)2020年10月撮影(以下同じ)
石原松花堂の主力商品は、暖簾分けを受けた人形町の重盛永信堂から受け継ぐ「人形焼」と「ゼイタク煎餅」。かわいらしい七福神型の「人形焼」は薄皮でこしあんがぎっしり詰まっているのが自慢です。もう一つの「ゼイタク煎餅」は、揚げた空豆が入った「ビンズ」、砕いたピーナッツが香ばしい「格子」など、卵の風味がふんだんに広がる生地に様々な工夫が加わった銘菓。早稲田のお土産としての人気の高い「早稲田煎餅」もそのラインナップのひとつです。
石原松花堂
石原紀久代さん(以下、紀久代さん)早稲田大学の生協で店長をされていた方が毎日この通りを通っていたのが縁で、先代が元気だった今から20年くらい前に『生協に出す商品を作って欲しい』と頼まれたんです。今でも早稲田大学に通われていた方が『懐かしい』と寄っていただくこともありますし、若い方が『お父さんが好きだったから』と言って買いに来てくれることもあります。
また、大学と同じく西早稲田の名所である子育地蔵の焼き印がかわいい「地蔵煎餅」も人気の品。商店街が企画した集まりでも早稲田煎餅や地蔵煎餅を記念品で配ることがあるといい、西早稲田の街に欠かせないアイテムになっています。
石原松花堂
紀久代さん添加物をまったく使っていない、混ざり物のない味がうちのお菓子の特徴です。人形焼は蜂蜜が入っているので1歳未満の赤ちゃんにはあげられないけど、子供にも安心して食べさせることができる。もっと日持ちするものにしたいと思うこともあるけれど、やっぱり添加物を使わないのがこだわりですね。
石原善裕さん(以下、善裕さん)人形焼は手作りの味を届けるだけではなく、見た目も綺麗に焼くことが大切だと思っています。でも、同じタネを作って同じように焼いたとしても、まったく同じ顔にはなりません。10年、20年とやっていても自分が100%満足できるところになかなかたどり着かないのがこの仕事の難しいところですね。
石原松花堂
創業時から使い続けている焼き型が壁一面にずらりとかけられた室内で、作業をしながら仕事へのこだわりを語ってくれた善裕さん。常に火の熱さがじわりと伝わる炉の前でひとつひとつの人形焼やお煎餅とひたむきに向き合う姿はまさに職人の姿です。

「石原松花堂」と西早稲田商店街の出会い

石原松花堂
紀久代さんむかし聞いた話では、人形町の本店(人形町にある重盛永信堂)から独立した主人は中野に最初の店を持ち、戦後はロシアで抑留を経験し、帰国して初めは吉祥寺で店を始めたそうです。ただ、吉祥寺駅の出口が近くにできると聞いてその場所を選んだものの、出口がまったく違うところにできてしまって…、それで西早稲田の地に移ったと聞いています。ちょうど、1964年の東京五輪の頃ではないでしょうか。
そんな「石原松花堂」に目黒で勤め人をしていた紀久代さんが嫁いできたのは昭和48年(1971)のこと。そこから50年近くお店の店頭に立ち続け、夫唱婦随で営んでいたお店を今では息子の善裕さんと切り盛りしています。「わたし、もう80歳なのよ」と気さくに話してくれる紀久代さんの笑顔は、棚に並ぶお菓子と同じくこのお店に欠かせない存在。
紀久代さん
善裕さん父は昔ながらの職人気質の人でした。子供の頃から何かを教わったという思い出はなくて、仕事をしていた姿しか記憶にありません。ただ、自分が同じ仕事を始めてからは、丁寧な仕事をする人だなと、その背中に尊敬を覚えるようになりました。
善裕さん

「また来たくなる街」、
西早稲田の街に流れる気風とは

西早稲田2丁目から3丁目にかけて、早稲田通りと明治通り沿いに計130軒以上の店舗が軒を連ねる西早稲田商店街。「石原松花堂」があるのは高田馬場駅方面から見て商店街のほぼ入り口にあたります。学生街ゆえ変化も多い街にあって、経年の重みが伝わるガラスケースやアナログのはかりなどがある店内はここだけ時が止まったかのような雰囲気です。通りの中にちょこんと馴染んだお店の前を通りかかると、昭和レトロな趣を感じることが出来るはず。そんな風に時代を越えて西早稲田の街を見続けてきた「石原松花堂」のお二人から見た、西早稲田商店街やこの街の魅力とは。
西早稲田商店会MAP
西早稲田商店会MAP
紀久代さん暮らしている側からするとあまり意識することはないですけど、周りから遊びに来た友達からは『良いところだね』って言われます。移り変わりも大きい街だけど、その中でもずっと来てくださるお客さんもいますし、学生時代の味を求めて戻ってきてくれる方もいます。ウチだけでなく、そうした『また来たくなる』魅力というのが、この商店街の良さではないでしょうか。
石原松花堂
善裕さん子供の頃は甘泉園公園や箱根山の周りなど地元でよく遊びましたが、今では新宿や池袋に出ることが増えました。やはり、どこに行くにも便利なのが、この街の魅力だと思います。ただ、その一方で、今年は無くなってしまったけれど早稲田祭や運動部のパレードといった大学のイベントの時や、諏訪神社や穴八幡宮のお祭りの時には街全体で盛り上がる。そういったこの街ならではの面白さもありますね。
2020年は自粛となってしまいましたが、大売り出しやクジ引き企画、音楽ライブなどのお楽しみが盛りだくさんな毎年10月の「地蔵まつり」のように、元気な商店街を印象付けるイベントもたくさんある。若い世代の新住民や学生が企画する催しも多く「街の中に新しいことを応援したいと思う気風がある」と善裕さんは話します。
石原松花堂
半世紀以上に渡って西早稲田商店街を見続けてきた「石原松花堂」。その店先で元気にお客さんと向き合う紀久代さんと、その裏でお菓子を焼く善裕さん。これまでもこれからも変わらない情景は、西早稲田に暮らす人々の実直さや街に漂う人情を表す縮図といえるかもしれません。ぜひ、お二人の仕事ぶりと笑顔に会いに、西早稲田商店街を訪れてみてください。
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※掲載の情報は2020年10月取材時のものです。